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コントミンで離脱症状?

当直帯の夜22時を過ぎた頃、調剤室に鳴り響く電話。

また病棟からの薬の催促かと、気だるい感じで受話器を取る。

予想外にERからの救急医の問い合わせで、理沙はドキリとした。

 

救急医「ちょっと薬のことで教えて頂きたいんですが」

理沙「はい、何でしょう?」

救急医「コントミンで離脱って起きる可能性あるでしょうか?」

理沙「離脱…ですか?」

救急医「はい、精神疾患のある方で、コントミンをずっと服用されてた方なんですが、中断して、それで今離脱かどうか分からないんですけど、錯乱状態みたいで。」

理沙「…うーん」

理沙は答えに詰まった。

精神科の薬物療法には、正直詳しくない。

なぜなら、理沙が勤める総合病院には精神科がなく、臨床経験がほぼゼロに等しいからだ。薬の効果や副作用など、教科書的なことなら添付文書をみれば答えられるが…離脱?

大酒家の飲酒中断による離脱、なら消化器内科でよくあるけれど…コントミンの添付文書にそんなこと書いてあったかな?

ERからの電話ということもあり、気が焦る理沙。

 

いや待て。

離脱が起きることがあるかどうかを聞かれてる訳だから、可能性について理由とともに答えられれば…

 

理沙はスマホを取り出し、素早く添付文書アプリを開いた。

 

商品名:コントミン

一般的名称

クロルプロマジン塩酸塩錠


薬効薬理

18.1 作用機序
クロルプロマジンの作用機序は、まだ完全に明らかにされていないが、中枢神経系におけるドパミン作動性、ノルアドレナリン作動性あるいはセロトニン作動性神経等に対する抑制作用によると考えられている。

 

これだ!

コントミンは中枢神経系におけるドパミン作動性、ノルアドレナリン作動性あるいはセロトニン作動性神経等に対する抑制作用をもつ薬と考えられている。

これと同じ作用機序の薬で、比較的新しい薬について思考を展開すれば答えられる!

理沙「コントミン中断で、離脱症状を起こすことは、あると思います。

コントミンは、ノルアドレナリン作動性あるいはセロトニン作動性神経を抑制するお薬です。薬を中断することで、脳内神経のバランス状態が崩れて、離脱が起きることはあり得ると思います」

ここまで言えれば、一先ず尋ねられたことには答えられた、と内心理沙はホッとした。

救急医「そうなんですか。可能性はあるんですね。内服していた量と関係はあるでしょうか?」

 

う…言葉に詰まる理沙。

ここは正直に知っていることだけ答えよう。

理沙「内服量と離脱との関係は分かりません。」

離脱は急にアルコールや薬をやめると起こるものだ。普段高用量を内服していればいるほど、中断による離脱のリスクは高いだろうが、どの程度の量なら起こり得るのかまでの臨床知識は残念ながら持ち合わせていない。

救急医「分かりました。ありがとうございます。参考になりました。」

 

ふう、終わった…。

理沙はホッと胸を撫で下ろした。

たまにこう言う電話があるから、当直は嫌だ。

自分の不勉強さや記憶力の悪さが身に染みるのだ…

 

コントミンの中断で離脱症状が起きることはほぼ間違い無いと確信して答えたものの、もっと上手い伝え方は無かったものだろうかとモヤる理沙であった。

 

久々に精神科の薬の勉強でもしよっかな…

参考書片手に、当直の夜は更けていく。